
レビー小体型認知症になると、悪夢を見るようになる方がいます。
しかも、ただ、悪夢を見るだけではなく、大声で寝言を叫んだり、時には起き出して暴れて手がつけられなくなるなど暴れるなど、対応が困難なケースも多く見られます。
この原因として、「レム睡眠行動障害」の発症が考えられます。
【レム睡眠行動障害とは?】
人間が睡眠をとる際には、浅い睡眠状態であるレム睡眠と、深い睡眠状態であるノンレム睡眠に分けられます。
その、浅い睡眠状態であるレム睡眠状態の時には、脳は覚醒している時と近い活動を行っており、夢を見ている時の大半が、レム睡眠状態の時となります。
そこで普通なら、夢を見ている場合、身体の緊張が抜けて動き出すような事はありませんが、レム睡眠行動障害になると、何らかの原因で身体の力が抜けずに、夢で見ている事と同じように心身とも行動してしまうのです。
【レム睡眠行動障害の原因】
二次的要因:40パーセント
頭部の外傷や、頭部の炎症疾患(外傷や脳炎、髄膜炎など)、アルコール等の薬物摂取、睡眠不足や抗うつ剤の副作用などが挙げられます。
原因不明:60パーセント
ストレスや過度の睡眠不足など憶測はありますが、はっきりとした原因は解明されていません。
以上のように、レム睡眠行動障害の原因は、謎のベールに包まれた病気であるといえます。
【夢遊病との違い】
夢遊病とレム睡眠障害は混合される場合もありますが、夢遊病は寝ているときに行動を行っていた記憶や夢の内容を忘れている事に対し、レム睡眠障害は夢の内容をきちんと覚えている事が違う点となります。
ですので、寝ている状態で本人が動いたというだけで、レム睡眠障害と診断するのは誤りであるといえます。
【レビー小体型認知症とレム睡眠行動障害】
ここまで、レム睡眠行動障害についてお話をしましたが、なぜ、レビー小体型認知症と関わりがあるのでしょうか?それは、レビー小体型認知症の特徴にあります。
くわしくは → レビー小体型認知症の特徴
示唆的特徴(中核的特徴がなくとも、下記の特徴があればレビー小体型認知症と疑われます)の中にレム睡眠行動障害の記述があります。
また、レム睡眠行動障害が見られた場合、基礎疾患としてレビー小体型認知症がある場合があるので、レビー小体型認知症の診断が下りていない場合で、単なるレム睡眠行動障害を患っている方は、レビー小体型認知症という病気が隠れているというリスクがある事を知っていると、早めの診断に繋がります。
【もうひとつのレビー小体型認知症の悪夢の原因】
レビー小体型認知症にかかっている場合に悪夢を見るという事で、レム睡眠障害以外の原因で考えられる事は、
「せん妄」
せん妄とは、軽い意識障害(混濁)に伴い、幻覚や興奮、思考力の低下、注意力欠如などが見られます。
急激に起こる場合があるので、家族は戸惑う場合が多いです。
また、せん妄は「夜間せん妄」と呼ばれる事もあり、夜間に症状が出現する事が多くあります。
【せん妄の原因】 せん妄の原因は大きく分けて3つあります。 1.身体的要因(疾患や体調不良、薬剤の副作用) 2.環境因・心理的要因(病気への不安、疼痛、環境変化) 3.生理的要因(加齢による睡眠障害) |
また、上記の要因を多く持っているのが高齢者となりますので、高齢者はせん妄リスクが高いといえます。
【せん妄と認知症の違いと対応】
せん妄は、急激に起こる意識障害で、幻視や興奮等がみられますが、あくまで一過性(数時間から数日)のものであると言われています。
ですので、せん妄症状が出てもあわてずに、「今は、せん妄という病気になっており、いずれは治る」という事を理解して、冷静に対応をし、本人を否定しないで受容する事が必要となります。
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