
レビー小体型認知症の特徴的な症状である「幻視」ですが、小人や虫が見える、という風に教科書には書いてありますが、今回は私がこれまで遭遇した体験談を聞きたい!
と読者の方からリクエストがありましたので、お伝えしたいと思います。
レビー小体型認知症の幻視「小人の群れ」
私がこれまで関わった高齢者の方で、いきなりレビー小体型認知症症状が出られた方がいらっしゃいます。
その方は要介護3の夫を介護している70歳くらいの女性なのですが、お体も健康でバスを利用して買い物に出かけたり、夫がデイサービスに行っている時間に健康づくりとしてフィットネスヨガに通うくらい元気な方でした。
うっかり程度の物忘れはありますが、短期記憶障害とまではとても言えない位しっかりしていましたし、落ち込みなどの鬱症状なども見られませんでした。
私はご主人の担当ケアマネとして関わっていたのですが、ご主人の問題行動がひどくなり、施設入所する事となりました。
そして、ご主人が施設に入所した翌日に、奥様(今後は「本人」と書かせていただきます)から電話がありました。
「私、小人の群れに攻め立てられるのに限界なので、今から死にます!」
一方的に私に電話で話した後、また一方的に電話が切られました。
レビー小体型認知症の幻視は現実と無理にでも辻褄を合わせる
私、これまで様々な相談を承ってきたんですが、ここまで「今から死にます」と面等向かって言われたのは初めてでしたし、「本当に死ぬ」という予感がこれほど濃厚なものも初めてでした。
とりあえず、「死にたい」という訴えがあった場合の最善の対処方法は、まず共感して、耳を傾け、自殺について話を誠実に行うという事であるという事を思い出し、とりあえず、車で即効、本人宅へ駆けつけた。
ここで行っていけないことは、話を逸らしたり批判的な態度を行ったり、安易な励ましをしないことが必要。
胸がバクバクしながら、本人宅のチャイムを鳴らすと「ハーイ!!!」と怒りと焦りがこもった様な声で返答がありました。
よかった。もし、返答が無い場合は既に自殺を行っている可能性もあり一人で入ることは出来なかった。
本人の生存を確認した後、私は本人宅へ上がり、本人を確認すると、二畳分くらいある大きな風呂敷に自分の洋服を投げつけていた。
本人になぜ洋服を投げつけているのかと聞くと
「これから自分が死んで洋服はいらなくなるので寄付する為に風呂敷にまとめていた」との事。
そして、あせった表情で風呂場に向かい、麻紐を取り出し蛇口にかけて
「今から首を吊るから足を引っ張って」
と私に哀願してきました。
残念ながら、私にも家族がおり、自殺の手伝いを行うとなれば自殺幇助になってしまい、私自身が犯罪者になるために手伝うことは出来ないこと。
そして、私はあなたの死にたい理由を聞きたいという事を伝えると、本人が口を開きました。
「わかりました。あなたには小さなお子さんもいるので手伝ってという事は難しいことは理解できます。
なので一人で死のうとは思いますが、私がここまで追い詰められている理由を聞きたいというのならお話します」
と返事をくれました。
そこで、風呂場から離れて、食事を取られる居室で話を行う事となりました。
「昨日やっとご主人が施設に入りましたが、お一人で過ごすようになったことがストレスになったのですか?」と私が尋ねると
「いえいえ、ご主人が施設に安心して入ることが出来たので、とても安心しています」という返答。
「ですが、私はもっと前から、ある人間に脅迫されているんです。
あまり人様に言える事ではないので、あなたにしか言わないんですが、秘密は守ってください。
実は、私の家の前にある商店がありますよね。
ですが、その商店はここ1週間ほどお休みをされているのです。
実は、その理由は、私にあるという証明がされています。
その証明というのは、私が5年前に自宅の庭にある柿の木を切ったんです。
実は、その柿の木の霊が、私の家の前の商店にとり憑いたせいで、お店が休んでいるんです。
そして、そのお店が休んでいる間の売上分を私が損害賠償しないといけないと脅迫されているんです」
は?そんなこと現実的にあるはず無いよ!と思いましたが、私は傾聴し、質問を行いました。
「それは、誰が言っているんですか?」
すると彼女はこう答えました。
「小さな小人が大群で私に四六時中、攻め立てるように迫ってきているんです」
そして、こう付け加えました。
「あなたには、ずっといる小人が見えないんですか!?
ほら、目の前にたくさんいるじゃないですか!!」
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